Milindaの防音室

Milindaの書斎の別館。主に歌を置いていきます。

駄歌放流


 放送大学短歌会に向けて定期的に短歌を作っているのですが、他人に通じにくいと思われるものは駄歌として適宜放流していくことにします。
 歌の冒頭についている通し番号は、先月からの通算です。




島内徒然草

 島内裕子先生が訳した『徒然草』の内容を一段ごとに歌にしていこう、という試み。とりあえず七十一段から八十段までを投稿します。

 ちなみに島内先生の訳はけっこう大胆なので、兼好による原文とは別個の文献と捉えたほうがいいかもしれません(笑)。私は『島内徒然草』と呼んでいます。

103. 名を聞かば面まで知る心地ありされど思いしままの人こそなけれ(七十一段)

104. 願文に作善 書き連ねたるは 調度の多き住処に同じ(七十二段)

105. 空言は珍しからぬものとこそ心得べけれまこと少なし(七十三段)

106. 迷う者 死をも忘れて 愚か者 死を悲しむよ 変化[へんげ]を知らず(七十四段)

→二句切れなんですが、分かりにくいだけで効果的じゃないかな。

107. 徒然をなどて侘ぶるや 摩訶止観 説きたるものを 諸縁止めよと(七十五段)

108. 然らずとも とは仰るがこの現代 市井に立つは定めと覚ゆ(七十六段)

109. 片辺[かたほとり]なれど世の事気になれば ネット中毒さもありなんよ(七十七段)

110. 内輪のみ通じる符丁使うのは特別である気になれるから(七十八段)

111. 入り立たぬ様こそよけれ何事も 問はぬ限りは語らぬもよし(七十九段)

112. 好めるは我が身に疎きことばかり己が道より侮らるべし(八十段)


日本文学における古典と近代

 私は放送大学の島内裕子先生が書かれた『日本文学における古典と近代』を愛読しています。
 どれくらい好きかというと「索引をすべて覚えたい」と思うくらい好きです。ただ、さすがにそれは実現できていません。索引の項目に通し番号を振る作業まではやったのですが、そこで止まっています(数え間違いがなければ、全部で1291項目ありました)。

 代わりにと言っては何ですが、気が向いた時に1つ1つの項目を歌にしていこうと思います。


以下の4首は項目「藤原兼家」から作られた歌。

113. 因と果は巡りて我も悟りにき汝に逢えざる夜ぞ久しき

→右大将道綱母『嘆きつつ一人寝る夜の明くる間は如何に久しきものとかは知る』への返歌のつもり。

114. 上手など言えぬからただ詫びるのみ 寂しい思いさせていたねと

115. 移ろうた菊の傍から新しき花は匂えり我らも咲かむ

116. 疑わば疑うていよ他所へなど通わざりけり汝のみを見て


以下は項目「藤原兼房」から作られた歌。

117. 寝る間こそ我が真実の生なりや教えを夜ごと人麻呂に乞う


以下は項目「藤原兼通」から作られた歌。

118. 通家どち 相争えば中書王 閑居記を成す 風と桶屋か


以下は島内先生が『徒然草』を日本文学の折り返し点だと評したことから考えた歌。

119. 兼好が国文学の折り返しならば世界の転換点は

→そのまんますぎて歌まで昇華できていないですね(笑)

あなたが…いない

『あなたが…いない』という曲の歌詞から作った歌です。
https://j-lyric.net/artist/a005425/l00bf2f.html

 こういうのはあくまで習作であってオリジナルではないので、短歌会に出すわけにはいきません。というわけで、ここに垂れ流します。

120. 汚れなき目にちらとでも映してとただ願いつつ話しかけたら

121. 友だちのままで近くにいられるし見ない痛みはないのと同じ

122. その目尻そんなにシワ寄るものなんだ 見たことないの私だけなの?

123. あなたいつ大事な人を手に入れた?訊いてどうする知りたくもなし

124. この目尻 冷たくなるに比例して あなたの笑顔ゆらめいていく

125. 分かったと思った時にはもう遅く測れないほど遠くのあなた

126. 触れるのはまだ怖いから今はその優しい視線注がれてたい

127. 合わせなきゃとは思ってるひたむきに私を好いてくれるのだから

128. ゆっくりと進めたいのは欠け替えのないあなたとの仲だからです

129. 私もさ 変わってくから 私から動ける日まで待ってくれない

130. 運命というのは貴方の理屈です 奪られる側は受け入れません

131. 言の葉の代わりに涙あふるだけ我らの想い解く術なし


『あなたが…いない』は『School Days』の挿入歌なんですが、この歌めちゃくちゃよくないですか?


以上、この記事の歌は10+7+12=29首。

十月歌会のために作った歌


私は放送大学の短歌会に入っています。十月の歌会に向けて作った歌を載せてみます。

  • 歌会のテーマが「国道」だったので、できるだけそれに関連させています。私が山国の出身であることもあって「国道=山道」と捉えた歌が多いです。
  • 100首を目標に作りました。「秀歌を選んで100」ではなく、無理やり100首こしらえたので、駄作も多々含まれております。お目汚しかと思いますが、興味を持たれましたら続きを読んでやってください。

1 初日の出いくら燃えてもこの霜は融けてくれない五十号線

国道50号は水戸と前橋をつないでいます。

2 あいにくの鉛の雲が御来光どう隠そうと君さえいれば

→早くも国道が関係なくなってしまいました。

3 朝の靄 虹も銀河も呑み込んで俺をそんなに事故らせたいか

4 白い霧 道の行く手も見えやらぬ 失恋直後の我も隠せよ

5 出来たての日差しを中に閉じこめて路面に留む朝の霧粒

6 暁光の結晶つくり空かざる国道の霧 風よ払うな

7 道沿いで天を突き刺す杉木立 凛々しいきみが生む花粉症

8 風薫り四方八方みな新緑この季節だけ国道が好き

9 膨れゆく入道雲に負けぬほど夏に浮き立つ童心の我

→これも道が関係なくなってしまいました。

10 国道の坂の向こうにわき立つはあの日と同じ故郷の夏雲

11 峰雲の厚さ白さを見るにつけ薄く汚れた我に恥じ入る

→これも道が関係なく(略)

12 耳を裂き夕立を呼ぶ積乱雲いいぞ紛らせ恋の涙を

→これも道が(略)

13 国道の落ち葉ふむたび思い出す繋いで歩く手の温かさ

14 枝にあれば見頃の紅葉と持て囃し地に落ちたれば早や可燃ゴミ

15 もう初冬 枝にわずかな臙脂の葉 寂しくないぞ俺が見ている

→これも道が(略)

16 吹雪でも吹雪だからこそクルマ乗る胆力なけりゃ住めぬ雪国

→「雪の日は怖いから乗らない」っていうわけにはいかないんですよね。買い物一つにも絶対に車は要るし。

17 割り箸を折るあの軽い音がしてサイドミラーがブチ割れていた

→スノーシェッドの柱にサイドミラーをぶつけてしまった、という体験を詠んでいます。分かりにくいですね…。

18 雪崩から僕らを守るこのシェッド 道を狭めて物損招く

→これもスノーシェッドの変(仮称)を詠んだ歌です。

19 いつだって一号線だよこの道は きみとぼくだけ歩く道だよ

20 高架から屋根見るだけで脊髄も脳も溶け出すあの人の家

21 あの人の家からここまでぶち抜けよ なあ国道よ 待ち人は来ず

22 「注意」って看板の割に降りもしない落石よ閉ざせ私とあの人

23 なぜ逃げる? 逃げなくていい 君の家は国道沿いと分かってるから

24 県道は真っ直ぐ伸びて逃げる場所 隠れる場所も君にはないよ

→以上2首はストーカーの歌。

25 ナデシコとヒメバラ道に競い咲き 盛りの私はただ捨てられて

26 この道の果てなど夢想もしなかった 夢の彼方へきみ転校す

27 夕霞 道の行く末 押し包み 見えぬ背中に伸ばす指先

28 手を重ね はじめて通った この国道いまは家族となって帰省す

29 トンネルが通った日に母 産気づき我が産声は県都で聞こえた

30 世に稀なトレカを友が手に入れた はしゃぎ飛び出しああ愛し子よ

→道がテーマなんだから、子どもが慌てて道に飛び出すということは…。

31 交差点 くすんだ血糊 途切れつつ濁点のごと打ち続きある

→折句です。各句の頭文字をつなげると「こくと゛う」になります。四句目は「濁点」という言葉をそのまま取るということで。内容的にも前の歌に関連しています。

32 アトピーの鱗屑散らす皮膚のごと おらが国道 劣化止まらず

33 丁字路の黒を白へと描き直す 膝にゃ悪いが風化にゃ強い

→「黒を白へと」というのはアスファルトをコンクリートで舗装し直したということなのですが、分かりにくいですね。

34 瀝青の生まれ変わった国道にガム吐き捨てるあの対向車

→「瀝青」というのはアスファルトのことです。

35 工人が汗水垂らし張り替えて照り映える道ああゴミが舞う

36 抜かれたら抜き返さんとドライバー猛り狂いぬ修羅の道かな

37 追い抜きに事故でもあらば傍らの代え難き人も絶え入るものを

→無理やり追い抜いて事故にでもあったら、お前の隣に座っている大切な人も死ぬんだぞ、という歌です。

38 誰彼とすれ違う毎おめき立つ前方車両 愛なき国道

39 ローディーさん田舎の道は狭いのです街へ行くことできないでしょうか

40 やあノウサギこの国道は危ないよ うちにお帰り畑を避けて

41 あら可愛い瓜のきょうだい駆けていく国道に出て轢かれて割れた

→「瓜」とはイノシシの子どものことですね。

42 おおイタチ襤褸と裂かれて道の華 官能的に舌見せるなよ

43 この道で熊を見かけた時にはな動くな喋るな写真を撮るな

→これも折句です。初句から四句目までの頭文字を取ると「こくとう」となります。五句目はまあ大目に見てください。

44 息凍るいつものままの通学路 今日は明日への入試への道

45 寒波すら心地よきかな手応えで満身震え乗る路線バス

46 自信なき試験に臨むバスの中 朝焼け満ちてああ禍々し

47 国道のトンネル抜けたらもう会社 心臓とび出る新社会人

48 国道を突っ切って着く我が職場 川面の水と抜きつ抜かれつ

→国道沿いに川が流れているという情景なのですが、伝わりにくいかも。

49 ブタとなり毎朝 屠殺さる工場 国道のバスに揺られて向かう

50 木々の葉の一つ一つに命満ち仕事さえなきゃいい道なのに

51 街が目覚め活気かくせぬこの国道 我は仕事を休み嘔吐す

52 一〇分も片側通行バスを留む遅刻の言い訳見つけ安堵す

→ちょっと「仕事に行きたくない」系の歌を入れすぎましたか(笑)

53 「名古屋では黄色まだまだ赤勝負」実行したら白バイ見てた

54 黄信号守るが損とペダル踏み駆け抜けんとす「はい違反二点」

55 「あの会社いじめ会社」と主張する謎の看板のどかな国道

→カ○バの近くですね。本当は国道じゃなかったと思いますが。

56 道を行く者みな二度見する看板 草叢の葉は心涼しく

57 これ国道? いや酷道さクソ田舎 引越し終えてベッドに伏せる

58 空気だけ水だけ木だけ笑顔だけ割と何でもある異動先

59 鳥は鳴き風は笑って川歌う気を抜けばすぐ村八分だよ

→田舎には田舎の難しさがあるんです。もちろん良さもありますがね。

60 ボロ信号 見てよみがえる筋肉痛 チャリ遠征のあの日あの風

61 夕映えに記憶たぐられ暫しの間 部活帰りの坂道偲ぶ

62 河川敷 カバン投げ捨て寝転んで見たのと同じ薔薇の残照

63 物言わぬ友よ今までありがとう国道沿いのこのタイムリ

→「タイムリー」というのは中部地方にたくさんあったコンビニですね。合併でなくなりました。

64 道沿いのコンビニ前の誘蛾灯 説明できぬ怖気が走る

65 駅裏のバイパス二本つながって今はこちらが表と賑わう

66 表なりし商店街はシャッター街 並木の葉のみ同じ金色

67 酒屋さん医院碁会所本屋さん旅館もどこに平成は遠く

68 民宿の河畔の眺めすでになくビルに見えるがあれ教会か

69 思い出がロードサイドに立ち並ぶ マックにバローに歌の19

→以上5首は、歌会のために最初に作ったもの。自分の体験にわりと忠実な歌。

70 世に出る日バスで上った国道を徒[ただ]にぶらつく自適の身かな

→国道というテーマに「定年後」というテーマを足して作った歌。

71 客乗せぬ道はこれほど安らぐかダイヤは追わず愛想も要らず

72 出る時刻 着く時刻みな胸三寸 規矩がなければ張り合いもなし

→以上2首は「バスの運転手の定年後」をイメージした。

73 どうせなら欲を隠すな国道の番号ほどの寿命を願え

→最も大きいのは沖縄の507号線みたいですね。

74 百一号 百一歳で走るんだ 手紙を残し北へ飛ぶ祖父

→国道101号は青森にあります。

75 百名道すべて走ると意気込んだ父は浄土の小道に逸れた

76 藤の棚 葬車の窓に見る国道 蔓よ枯れるな せめて永らえよ

→霊柩車のことを「葬車」ともいうらしいので使いましたが、ちょっと馴染みがない言葉かも。

77 国道を逸れて墓所へと参る道 いくつの命 我に連なる

78 ミズナラの枝と進化の系統樹 二重写しになる遊歩道

79 なんかここアジサイ街道らしいけど何処にあんだいそのアジサイ

80 霧雨がガードレールの苔濡らす アジサイあればなお似合おうに

→以上2首は国道256号「板取街道」をイメージしています。アジサイはある所にはちゃんとあります。

81 壊れても荒れても直さぬあの国道どうせダム湖に沈むんだからと

82 水底にいつ沈むのか あの国道 どこから見てももう獣道

83 放置されただ朽ちてゆくあの国道 YouTuberを呼び寄せるのみ

→以上3首は国道418号線の一部区間岐阜県八百津町あたり)をイメージしています。

84 国道沿い緑の山里のどかなり転落事故の本場に見えぬ

85 この里の御霊鎮めの薪能ポスターを見て知る道の駅

86 鎮むべき無数の霊が重なって 淀んでいるかこの峠には

→以上3首は国道157号の能郷白山あたりをイメージしています。

87 国道って山道ばかりじゃないんだね海を貫く三十号線

→国道30号は岡山県香川県をつないでいます。

88 いつ来ても夢でしかなく記憶にも残らずまたも海辺を走る

→山国出身の者にとって海岸ドライブは何度やっても現実感がないんです、分かりますか?

89 潮の香は色んな命の香りだと最近やっと分かってきたよ

→山の香りが色々な生命の香りであるのと同じように。

90 看板の「夜は一人で海来るな」なに指すものか知られし時代

91 海岸にゴミ捨て置いて去る者の背中に感ず無限の断絶

92 秒ごとに塗り替わりゆくCadillac Ranch 同じ速さで歴史つむぐか

アメリカのルート66をイメージした歌です。「キャデラック・ランチ」に次々と新しい色が塗られる様子に、アメリカの歴史が速く流れていくことを重ねて……みたいな。分かりにくいですね。

93 大陸のハイウェイ伸びる北極圏 わがふるさとの白馬の名あり

→アラスカのユーコン・ハイウェイの終点に「ホワイトホース」という街があることから、長野県の白馬村を連想した…という歌です。分かりにくいですね。

94 ああこれがロマン街道の元ネタか 山と川しか似とらんやろが!

木曽川沿いにある「ロマンチック街道」と、おそらくその元ネタと思われるドイツのロマンティック街道を比較した歌です。分かりにく(略)


95 川岸にネコやネズミの城あれど猿はおらぬかシュヴァルツヴァルト

→ドイツのライン川沿いに「ネコ城」「ネズミ城」と呼ばれる城があることと、日本ラインの近くに「猿啄城」があることを比較しました。分かりにく(略)


96 衛星のCナノチューブ地獄への蜘蛛糸のごと夢ぶら下げる

宇宙エレベーターと『蜘蛛の糸』に類似を見出しています。分かりにく(略)。「未来において国道に当たるものって何だろう」と考えたら、宇宙エレベーターかなと思ったのです。

宇宙エレベーター協会なんていう団体があるのは、私も知りませんでしたね…(笑)

97 スターボウ見飽きた後の静寂は君とでなけりゃ耐えられないよ

→宇宙船で星間飛行してる歌ですね。これも未来の国道(略)

スターボウについてはこちら。


98 須臾の間を無の大きさがすり抜けて君との旅をメモリに刻む

→これはフラッシュメモリに情報が記録されることを「道のトンネル」に見立てて詠んだつもりなのですが、めちゃくちゃ分かりにく(略)。「ミクロの世界で国道に当たるものは何だろう」と考えたらこうなったのです。
→「須臾」というのは現在でも慣用句に使われますが、10のマイナス15乗という非常に小さな数のことを指すそうです。また、古典的な物理学では電子の半径を約2.818×10^{−15}メートルと考えていたそうです。そこから「須臾の間=電子1つほどの小さな隙間」と連想したわけですね。
→でも現代の物理学では「電子の大きさは無。そう考えても不都合はない」ということになっているらしいです。「須臾の間」よりもっと小さい隙間を大きさのない電子がすり抜けていって、なんかそれがフラッシュメモリの仕組みにも関係してどーのこーのらしいです。正直、私もよく分かっていません。


99 放課後の送り迎えに大通り学校見えず不安が募る

→最後は折句で「放送大学」を詠むこととしました。道にも関係させています。

100 放置した送信履歴 大切な学生時代の記憶だけれど

→これも放送大学。道は関係ありません。まだ初心者なのに折句みたいなお遊びをするのはよくないのかな、と思ったりもしますが……。

101 「ほっといて」素っ気ないのに抱いてくる がっつきすぎよ車の中で

→これも折句です。「ほう」「そう」「だい」「が」「く」を各句の頭に置いてみました。車の中で、と無理やり付けて道にも関係させたつもり。

102 法悦はそう有るものでなし大涅槃 我を捨ててこそ苦は苦だと知る

→これも各句の頭が「ほうそうだいがく」。何か難しそうなこと言ってるだけで、深い意味はありません。大涅槃というものの意味は私にもいまいち分かりません(ぉぃ)。ただ、苦に意味を求めすぎるのは我執であり、苦は苦に過ぎないんじゃないか、とは思っています。

Composition 89 古典和歌解読


小松英雄『古典和歌解読』
p1「本書で導かれる主な帰結」より

古今和歌集』は叙情詩としての和歌の確立であった。それは、『万葉集』の短歌の外形を継承して、言語の線条を仮名の線条に転換し、表現を重層化することによって達成された。短歌を和歌に変容させる誘因となったのは、平安初期に仮名の体系が形成されたことであった。ただし、その転換によって豊富な表現を盛り込むことが可能になった代償として、韻文の生命とも言うべきリズムを喪失し、また、短詩形に限定したことによって、三十一文字で表現しきれない剰余を、しばしば詞書に依存せざるをえなくなった。それらは、是非とも克服する必要のある重大な欠陥であった。

※注への誘導や傍線などは省略した。

In the history of Japanese literature, lyric poetry was established in Kokin Wakashu, compilated at the beginning of the 10th century. Those days' poets succeeded the verse of Manyoushu but converted it from the phonetic lineation to the literal one. That enabled them to reduplicate their expressions and portray their various emotions in Tanka. The mainstream of Tanka shifted to lyric poetry. It was the Japanese writing system with Kana invented by the early Heian period that occurred the change mentioned above.
However, the style of Kokin had two crucial defects. First, Tanka of this period lost the rhythm, which is the so-called soul of verse. Second, the poetic way was limited to Tanka. Choka, the long form of a poem, declined. The poets often had to add Kotobagaki, the foreword of Tanka, to explain their emotion, which could not be expressed in the thirty-one syllables. The following generations, such as the poets of the period when Shin Kokin Wakashu established, must have overcome those two faults.

※リーダビリティ・スコアは52。アプリ曰く15歳くらいから読める英文。

今回、特に感想はありません。現段階の自分の知識では「へぇ~」としか言えないので……(笑)

『古典和歌解読』の内容については以下の記事にまとめてあります。

自分用メモ41 短歌・歌謡関係の本


読んだ本の内容をメモしておきます。少し専門的な本なので、私にも読み解けていない箇所があるかもしれません。この続きを読み進められる方はご了承ください。


小松英雄『古典和歌解読』

  • 本書の最大のメッセージは「古今集時代の和歌は音読ではなく黙読で味わうものだった」ということだろう。要するに音読されることが前提ではなく、書かれた文字を目で読まれることが前提だったのだ。筆者はそう主張している。

※以下の記述にもすべて「筆者はそう主張している」と付けるべきだが、いちいち書かないことにする。

  • 仮名文字を発明したことで、一つの単語に同訓異字の意味を持たせたり、清音と濁音の両方で解釈できるようにしたり(「もの憂かる」と「もの憂がる」など)と表現が深化した。
  • この工夫は音読して耳で味わうだけでは理解できない。実際に、古今集の成立から100年くらい経ったころにはすでに理解されなくなっていたようだ(和歌を目で見ず、耳で聞いて覚えるようになっている。枕草子に出てくるエピソード)。以後の時代で歌学とか歌道と呼ばれていたものは、すべて古今集の理解ができなくなった後の産物ではなかったか。
  • 古今集巻十九に「短歌」という見出しで長歌が収められていることは古来よりの謎。これはついては「五七調だった万葉集の短歌を七五調に変え、長歌の末尾だけを切り取っても短歌として成立するようにしたのだ」と解釈する。
  • 仮名文字による表現の深化は、「1.万葉集時代の五七調のリズムを失った」「2.情報を詰め込もうとしすぎて詞書に頼るようになった」という2つの欠点を伴っていた。
  • 1.については代わりに七五調が発達した。和歌に限らず今様や軍記物なども七五調である。
  • 2.は「言いさし」「本歌取り」という技法を編み出すことで解決しようとした。詞書で長々と説明する代わりに読者に判断を委ねるか、関係のある他の歌を連想してもらおうとしたのである。この言いさしと本歌取りが生み出す雰囲気こそ「幽玄」ではないのか。


宮内仁『日本の木遣唄』

木遣唄はだいたい以下のように移り変わっていった。
 仕事歌:実用的。木を引くタイミングを合わせる等の目的がある。
→祝い歌:家が建った後などに歌う。お伊勢参りの流行とともに、全国の祝い歌が伊勢音頭の影響を受けた。
→芸能歌:観光客に見せるもの。完全に日常から離れている。

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Composition 88 自作品(古今和歌集もあるよ)


いま書いている小説の一部を翻訳してみました。「日本語→英語→日本語」と移し変えたほうが、悪いところを見つけやすい気がするからです。

過去の記事にもあったように、ジャンルはラノベ・学園・ラブコメです。
短歌はいつも通りに音節数を「3・4・3・4・4」にして無理やり訳していますが、登場人物によって解釈が分かれる場面まではさすがに訳せませんでした。ダブルミーニングはすべて日本語表記が(特に、漢字をひらがなで表記することが)前提となってしまいますので…。

リーダビリティ・スコアは75でした。アプリ曰く12歳くらいから読める英文だそうです。

 山の端に太陽が沈んでいくところだった。
 この辺り一帯は昔から「群青ぐじょう」と呼ばれている。しかし、いまの風景は群青色からほど遠い。草も、木も、家も、人も、線路も、道路も、川も、山も、空も――すべては夕陽に染められ、真っ赤に燃えていた。

The sun was setting on the edge of the mountain.
The whole district has been called Gujo since long ago, which also can be read Gunjo. If you pronounce it Gunjo, it means the color of ultramarine in Japanese.
However, everything was far from blue at this moment. The evening sun was shining on glass, woods, a running river, mountain ranges, the sky, etc. All of them were dyed crimson and looked like burning.

 半開きの窓から心地よい風が流れ込み、分厚い文庫本のページを揺らした。表紙には縦書きで『古今和歌集』と印刷されている。
 そこは積翠高校の教室だった。窓際で二つの机がくっつけられ、三つの人影が周りを囲むようにして椅子に座っている。

A gentle breeze blew in from a half-opened window and fluttered some pages of a thick paperback. On the cover, the title 'Kokin Wakashu' was printed vertically in Kanji.
There were three people in a classroom of Sekisui High School. They had put two desks at the window and had been sitting on chairs surrounding the desks.

「じゃあ、次は二十四番がいいです」
 と、草間木葉は早口で言った。浮かれているのか慌てているのか、歌道部の活動をしている間の彼女はいつもこんな感じだ。 
「いいですよね?」
「伊達がよければ」
 と、歌道部の顧問である小瀬が答えた。伊達春明も、手元に目を落としたまま無言でうなずいた。

"Then, I would like to review No. 24 next," said Kusama Kanoha hastily. It was unclear whether she felt merry or flustered. Anyhow, when she is acting in the Tanka Poetry Club (TPC), she usually talks in such a tone.
"Is it ok?"
"If Haruaki doesn't mind," answered Mr. Oze. He is the teacher in charge of TPC. Date Haruaki nodded silently, casting his eyes down at the book.

「いきなり戻ったな」
 春明はページをめくって二四番の歌を探す。見つけ終わらないうちに、木葉が歌を読み上げだした。

ときはなる
松のみどりも
春くれば
今ひとしほの
色まさりけり

"How toward the beginning you went back!" muttered Haruaki. He turned over the pages and searched the poetry No. 24. Before he discovered it, Konoha started to read aloud.

Even though
evergreen pines
looked revived.
Spring recreates
the whole nature.

 いい声だ、と春明は思う。おそらく身内の贔屓目ではないのだろう。客観的に見ても、いい声のはずだ。一音一音がはっきりと発声されており、明らかに朗読に慣れた者の読み方だった。歌道部などという妙な部よりも、きっと演劇部か放送部のほうが似合う。

Haruaki felt Konoha had a good voice. It was probably not the favorable light by a club member. Looking at objectively, Konoha must have been a good reader, too. She could vocalize each syllable vividly. It was apparent that she was used to recitation of poems. The theatrical club or broadcasting one was well-matched for her rather than TPC, a strange, minor club.

ときはなる
松のみどりも
春くれば
今ひとしほの
色まさりけり

 もう一度、同じ歌が繰り返された。名調子を奏でる木葉の横顔を、春明は見つめた。
  小さな顔だった。ただし背も低いので、あまりスタイルがいいとは言えない。顔の各パーツも小ぢんまりとしていて、愛らしい耳が健気に眼鏡のツルを支えていた。

Even though
evergreen pines
looked revived.
Spring recreates
the whole nature.

Konoha repeated the same verse. She generated a rhythmic flow, and Haruaki stared at her profile.
She had a small face but also a short stature. So Konoha was not very good in shape. Each part of her face was compact, too. Tiny ears were suspending the temples of glasses.


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Composition 85 古今和歌集


相変わらず音節数が「3・4・3・4・4」になるように訳しております。この原則から外れている箇所があったら「冠詞か前置詞を弱く読むから音節に数えてないんだな」と無理やり解釈してください。
底本は角川文庫ソフィアの古今和歌集(窪田章一郎・校注)です。

69 春霞 たなびく山の さくら花 うつろはむとや 色かはりゆく

Spring haze makes
cherry blossoms
fade away
as if they were
willing to fall.

72 このさとに 旅ねしぬべし さくら花 ちりのまがひに いへぢわすれて

Shall we stay
at the country
pretending
we get lost by
falling blossoms?

73 うつせみの 世にもにたるか 花ざくら さくと見しまに かつちりにけり

How short the
life of cherry
blossoms are!
Everything is
impermanent.

→ちょっと無理やりな訳ですね。上の句と下の句は別の人の台詞だと考えたほうがいいかもしれません。

もう1~2首訳したいのですが、時間がないのでこの辺で。時間管理って難しいし、ブログ続けるのって大変ですね(今更)。

Composition 70 古今和歌集


相変わらず音節数が「3・4・3・4・4」になるように訳しております。この原則から外れている箇所があったら「冠詞か前置詞を弱く読むから音節に数えてないんだな」と無理やり解釈してください。
また、私はいまのところ「説明的な訳」しかできません。「詩的な英語」「美しい英語」は書けません。それでもよければ見て行ってくだされ。
底本は角川文庫ソフィアの古今和歌集(窪田章一郎・校注)です。

28 ももちどりさへづる春は物ごとにあらたまれども我ぞふり行く

Diverse birds
are singing. New
spring has come,
but I'm only
getting older.

31 春霞たつを見すててゆく雁は花なき里にすみやならへる

Spring haze rose,
but wild geese flew
to northward.
Don't they wanna see
full bloom flowers?

46 梅がかを袖にうつしてとどめてば春はすぐともかたみならまし

If I leave
the ume fragrance
with my sleeve,
it'll be keepsake
after this spring.

梅は plum と訳されてきたがそれは誤りだ、とネット辞書にありました。なぜ誤りなのかは書いてありませんでしたが……とりあえず ume と表記しておきます。

51 やまざくらわが見にくれば春霞峰にも尾にもたちかくしつつ

Hey spring haze,
why do you hide
flowers from me?
Why so spreading
from peak to ridge?

元の歌には「自分が花を見に来たら霞に隠された」とあるだけで「なぜ隠す?」とまでは言っていないのですが、意訳しています。

68 見る人もなき山里のさくら花ほかのちりなむのちぞさかまし

No one finds
that alone sakura
in a mountain.
It'll bloom after
others fall down.


いま書いている小説に関係しそうな歌をいくつか選んで訳してみました。
このブログがいい息抜きになっているので、何とか最後まで書き上げられる、かな……?

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